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「ノワール大食いなんだねえ」
「悪いかよ」
車に揺られ、セオドアの横で頬杖をつき、流れゆく街並みを何となく眺めてはふてくされたように返す。
「お菓子は僕も好きだよ。帰りに何か、買って行こうか」
「いちごショート」
「はいはい」
クスクスと笑うセオドアに、少なからず不満を抱く。
「おい」
「ん?」
「契約」
「あー…」
「あーってお前な!!俺だって他にリスト内の人間はいるんだよ!!お前だけに構ってらんねぇんだこっちは!!」
「危ないよ」
立ち上がろうとする相手に声をかけるセオドアは、珍しく落ち着いているように見えた。
温和しい、とはまた違う。
「もうちょっとだけ、ね?」
「…ったく」
「僕、正直何も考えてないんだ。でも夜まで待って欲しいな」
車はいつの間にか止まっていた。
「絶対だぞ」
ニッコリと笑ったセオドアの表情は少し寂しそうだった。
店に着くなり、中へ入る。
女性物、男性物、子供物など、幅広くおいてあり、どれも質もデザインもいいものばかりだ。
「いらっしゃいませセオドア様」
「あれお願いします」
「かしこまりました」
店を見渡すノワール。
気に入ったデザインがあったようで、その方へ向かい歩く。
「こちらデルヴロワ社のものになります」
「白はある?」
「はい、こちらに3着ほど」
様々な服が並べられ、セオドアは満足そうに笑んだ。
「これ、全部ください」
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