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「かわせセオドア!!」
「!?」
―――キィィン
反射的に体が動く。
先程自分がへたり込んでいた地面には、真っ黒い針が刺さっている。
「う…そ」
何だこれ
何だこれ何だこれ何だこれ何だこれ何だこれ何だこれ
「うわぁぁああぁああッ」
衝動的に涙が溢れる。
恐怖心が、喉を潰すように叫ばせる。
「…くそっ」
ノワールが苦虫を噛む。
フードの奥から青いグロスが歪むのが見えた。
「ふふ…ふふふふ」
遠くに建物が崩れるのが見えた。
どうやらもう一組、派手にやり合っているらしい。
(分が悪い…場所変えねぇと)
屋根から屋根へと飛び移ったり走ったり、セオドアから離そうとする。
「逃げたりなんてヒドいわ赤毛チャン」
黒装束はそれを跳ねるように追いかける。
「…なんだ…これ…」
アレッシオがセオドアに駆け寄る。
「セオドア様…ご無事ですか?」
「僕は、大丈夫…他の、怪我してる人達、見てきてよ…」
「しかし…」
「大丈夫、だから」
返す言葉を飲み込み、周囲の人々へと向かう。
呆然とその光景を眺め、息をつこうとしていたのも束の間。
「そこの、危ねぇぞ」
「!?」
――ドカッ
顔を上げると、すぐ傍に見えたのは、深緑が銀に塗られたように輝く、
「……斧?」
「悪いな嬢ちゃん、今めんどくせぇのに追われてんだ」
声のする方へ顔を向けると、煙草をくわえた男が斧の柄に立っていた。
「ドロテアの奴どこ行ったんだ…あ゛ー、帰りてぇ」
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