聖者

10/10
前へ
/10ページ
次へ
「よし…終了」 最後のナイフを研ぎ終わり鞘に納めると、カゲルは立ち上がりベッドに向かった。 作業時間は1時間弱… 授業は100分と休み時間10分なので、30近く一休みできる。 「パイプベッドのが落ち着くなぁ… まぁ煎餅布団には遠くおよばないが…」 小さなころから色々な道場を回ったカゲルは慣れ親しんだのが煎餅布団だった。 目を閉じ、フト意識が薄くなり始めた瞬間に身体の下… つまり階下に気配を感じた。 「お客様…か、俺の眠りを妨げやがった罪は重いからなコンチクショウ…」 ベッドから立ち上がると、自身の身嗜みを整える。 神父は兎に角神経質にやれば失敗はしない…経験上はだ。 整備したての聖書を手にとり、秘密の部屋を後にした。 背後では壁が穴を塞ぎ、逆向きになった十字架が正位置に戻った。 あとに残るは殺風景な神父の普通の部屋だけだった。 「今日はここに隠れるかなぁ~」 鼻歌混じりに教会の椅子に寝そべる女の子。 見事な緑のショートヘアを無造作に椅子に預ける姿は何か可愛い印象を受けさせる。 「次は~…屋上にでも逃げるかぁ」 目を閉じながらそういった女の子は両手を組んで背を伸ばした
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

884人が本棚に入れています
本棚に追加