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「野中のおっちゃんじゃん!これ、おっちゃんが作ったのか?」
京太が尋ねる。
「ああ。力作だぞ。もしかしたらチビッちまうかもな」
「じゃあ入ってみようよ」
僕は提案した。昌樹も京太も賛成してくれた。
忍は嫌がっていたが、昌樹に引きずられながら、入っていく。
入口で小銭を払って、僕らはお化け屋敷に入った。
地面は、土の感触が分かるし外の音も聞こえる。
時々、人形がぬっと出てくるが
ちっとも怖くなかった。
最後のほうになると、机の上に日本人形が下からライトに照らされてポツンと置いてある。
その様子は、この中では一番不気味に思えた。
これが動き出したら、さぞ怖いだろう。
そんな事を考えていると、先を歩いていた昌樹が突然人形を手で払いのけた。
どさりと地面に落ちる。
「おい、何やってんだよ」
京太が、小声で注意をする。
「動くのかとおもってさ。ただの人形だったな」
昌樹は、人形を拾いもせずにさっさと出ていってしまった。
僕は、そっと人形を拾い上げ、砂を払い、机の上に置いた。
その時、手に触れた人形の髪の感触がしばらく手に残っていた。
外では、昌樹と忍が待っていた。
「ちっとも怖くなかったな」
「即席で作ったようなお化け屋敷だもんな」
僕らは口々に勝手な事を言ったら
作者である野中のおじさんに、
「素人の手作りに無茶な注文はするな」と言われた。
そんな僕らを二つの目玉がじっと見つめていた。
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