お菓子の箱の上

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 あと一畳だと何度も思いながら、僕はさっきから頭上で繰り返されるチャキチャキという恐ろしい音に、意識を向けずにはいられない。  たぶん間に合わない。光と光、つまり鉄と鉄の刃が擦れ合う音がだんだんと早くなるのを感じて、同時に体が前進していないことを悟った。  いや、かろうじて動いている。切り離された足は後ろ足。まだ僕には、小さくても強く脈打つ心臓と、そこから繋がる二本の前足が残っている。  その前足をヒッシに動かしながら、僕は生命というにはイビツになってしまった体を引きずった。
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