1章.手紙

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「玲介、晩ごはんできたわよ」 こう言うのは俺のばーちゃん。両親がいない俺の世話をしてくれている。 母さんは俺を産んですぐ死んだらしい。 親父は俺が中1のとき失踪した。 どっかの大学の教授で、いつも研究室にこもって家には年に一回帰るか帰らないかだった。だから俺も顔はよく覚えてない。 事件に巻き込まれたのか、事故に遭ったのかは分からない。 分かっているのは、ある研究をしている途中に忽然と姿を消した、ということだけである。 でも、両親の記憶が鮮明でない俺にとって、悲しいとか寂しいとかそういう感情はなかった。 「いただきまーす」 俺は目の前にある晩飯に手を伸ばす。 今日は俺の好きなハンバーグがメインだ。どうでもいいけど。
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