楔をこの胸に

15/15
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
 それは何なのか。  両親を救えなかった自分。  両親の後を追えなかった自分。  両親の死を受け入れられなかった自分。  生きているのに、生きていない自分。  涙が一筋。  陽の頬を伝った。 「来ると思った」 「え?」 「あなたは私のもとへ、来ると思った」  何故そう思ったのか。  それは彼女にしか分からないけれど。  何故彼女が気になったのか、陽には分かっていた。  彼女に言う通り、同じだからだ。  全てに絶望して、けれどどこかで求めてる。  たったひとつの希望を。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!