11人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
見上げた空に、太陽がさんさんと輝いている。
陽は目を細め、汗ばむ手の平を服で拭った。
手の平が汗ばんでいるのが、決して暑さのせいだけではないことに、舌打ちする。
ここは旧地球。
陽は男性アンドロイド、だ。
No.012
人間年齢、つまりアンドロイドになった年齢は18歳。
アンドロイド年齢、つまりアンドロイドになってからの年齢は197歳。
おじいさんもおじいさんだ。
しかし彼の姿は若いまま。
鮮やかな銀髪は長めで跳ねており、大きな二重の瞳は宝石のように輝く青。
黒いスウェットスーツに身を包み、決して背の高くない彼はため息をついた。
彼は今、宇宙船の操縦席に座って、空を見上げている。
宇宙船と言っても、それは戦闘機であり、小さな1人乗り用であった。
カプセルを人1人乗れるくらいに大きくした形で、丸い。
銀の装甲に透明な強化ガラスで覆われた、特殊なものだ。
装甲も強化ガラスも、例のない特殊な素材で出来ており、ちょっとやそっとじゃびくともしない。
もちろん、宇宙へだって行ける。
酸素補給や食事の問題は必要ない。
何故なら、アンドロイドだからだ。
宇宙船の中は狭く、発射台に居座った宇宙船から見える、ほんの少しの空の青さが、逆に憎らしい。
そう、陽は感じた。
最初のコメントを投稿しよう!