楔をこの胸に

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 見上げた空に、太陽がさんさんと輝いている。  陽は目を細め、汗ばむ手の平を服で拭った。  手の平が汗ばんでいるのが、決して暑さのせいだけではないことに、舌打ちする。  ここは旧地球。  陽は男性アンドロイド、だ。  No.012  人間年齢、つまりアンドロイドになった年齢は18歳。  アンドロイド年齢、つまりアンドロイドになってからの年齢は197歳。  おじいさんもおじいさんだ。  しかし彼の姿は若いまま。  鮮やかな銀髪は長めで跳ねており、大きな二重の瞳は宝石のように輝く青。  黒いスウェットスーツに身を包み、決して背の高くない彼はため息をついた。  彼は今、宇宙船の操縦席に座って、空を見上げている。  宇宙船と言っても、それは戦闘機であり、小さな1人乗り用であった。  カプセルを人1人乗れるくらいに大きくした形で、丸い。  銀の装甲に透明な強化ガラスで覆われた、特殊なものだ。  装甲も強化ガラスも、例のない特殊な素材で出来ており、ちょっとやそっとじゃびくともしない。  もちろん、宇宙へだって行ける。  酸素補給や食事の問題は必要ない。  何故なら、アンドロイドだからだ。  宇宙船の中は狭く、発射台に居座った宇宙船から見える、ほんの少しの空の青さが、逆に憎らしい。  そう、陽は感じた。
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