一章:黒革の手帖

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十八の夏から秋にかけてヘルプとして働いた私は係のホステスの客を奪って別の店で働いた。 二十歳頃には十二月晦日 こずえ(ほずみ こずえ)と知り合った。 二十三にして十七年越しの夢を叶えた。こずえと武仁に愛人関係を結ばせて、武仁と藤子姉さんを、間をおかずこずえを殺した。 武仁と藤子姉さんは浮気からくる人間関係のトラブルの縺れ、こずえは自殺という解釈で警察はこの事件を解決済とした。 浅野コーポレーションの代表となった私は会社を転売して我が身、浅野 香純を精算しきった。これが私の五年という月日。 私の人生はこれでいつ終わっても良いと思った。だが、生きている限りは生きなければとぼんやり考えた私は会社を転売したお金で銀座にクラブをつくった。私にはこの街以外に行き場など無かったのだ。私がクラブのママになるためにはいい黒服、ことに女の黒服を探さなければならなかった。標的は石田朔夜、通称神威(カムイ)さん、銀座でも有名な‘神の目を持つ女’。
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