479人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
ほとんどの村人が集まったことを見ると、再び声が張り上げられる。
「ソルムは、ソルム・ヴォルティスはいるか!?」
近くにいた村人から視線が集まる。「何かしたのか?」との疑問が口にしなくても聞こえそうだった。
ひとまず「さあ?」と言いたげに首を傾げておく。
それを見ると、前にいた人がその場を退く。それが三人ほど続き、俺と声の主が面会できる状況を作り上げた。むしろ、面会しなければならない状況を。
思わず溜息を吐くも、さっさと足を進める。
輪の中心にいるのは、村の入口付近に住んでいるファインおじさんだった。
やや太り気味だが、力強く気さくな人柄なため、村人に慕われている。
この人が取り乱す様は中々拝めない。更に自分に視線が集まる。
そんな若干居辛い雰囲気の中、構わずにファインおじさんが俺に気付いて口を開く。
「おお、ソルム」
「こんにちわ、ファインおじさん」
挨拶は物事の基本です。
「ああ、こんにちわ。……って、そんな暢気に挨拶している場合じゃない!」
「そんなに大変なんですか」
「ああ!ここにいる皆もよく聴いてくれ!」
一拍置いてから、大声で言った。
「ソルムが、合格した!!」
……耳がキーンとした。
最初のコメントを投稿しよう!