始まりはネタから

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唐突に目の前に現れる、巨大な館。五階建てで、全長は三キロにも及びそうだ。 しかも、それは一つではない。 規模は劣るが、正面にある館を中心に左右に一戸ずつ。これは、おそらくだが寮だろう。こちらは四階建てだ。 まあ、ここまでは規模が少し異常だが、許容範囲内だ。 しかし、館の奥に見える尖塔は許容できない。それも、三つも。等間隔で並んでいる。 ――ここは館(学校)だろ?何で尖塔!?城じゃないんだよ! 流石に口には出せず、内心で激しくツッコミを入れる。 そして、である。この学園はこれだけではない。校舎と思しき、正面の館。それと左右の学生寮と思しき館。それを繋ぐ石造りの道。異常はない。ここには異常はない。 しかし、その道の両脇に広がる鬱蒼とした森は異常だろう。学園でなければ、確実にお化け屋敷として子供の遊び場に指定されているだろう。そんな雰囲気を漂わせている。 ここが、明日から俺が通うらしい学園、クォルツ学園だ。うむ、受験に来た時からまるで変わらない、怪しい雰囲気だ。 「それでは、行きましょうか」 「はい」 そして、その怪しい館へと足を踏み出す。 父の言葉を、胸に刻み。 ――『男は信念で成長する』、ね……。帰る時を期待してろよ、親父。
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