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一応凶暴なこんな奴でも顔見知りだし、友人と言っても良いかもしれないような間柄だし、少しは心配する。
そんでもって、ついつい母さんの熱を測るときと同じようにしてしまった。
気付いたら、フレミィの瞳が目の前にあった。
そう。額と額をくっつけて熱を測っているのだ。
そんな状況だから勿論、フレミィの瞳は目の前にある。驚いて見開かれた茶色の瞳は俺の瞳だけを映している。
微かな吐息は俺に触れて消え、その発生源、唇へ俺の視線が移る。
フレミィから伝わる平熱は生を実感させ、艶やかな唇は異性を感じさせる。
その体勢でいること、約十秒。
「な、に……っ、やってんのよ!」
「ごふぉっ……!?」
一瞬にして離れたフレミィが、握り締めた拳で俺の顎を打ち上げた。
脳が揺れ、平衡感覚が一時的に失われる。倒れないように足をふらつかせながら動き、そして転がってきていたシルフェの足に引っかかって、努力空しく倒れる。
ゴンッ!
という音を聞いたかと思うと、俺の意識は今度こそ完全にブラックアウトした。
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