特訓と言う名のイジメ

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全身ズタボロで、制服も布キレと化している。そんな俺の目の前には冷たい鈍色の石の床。 頭の先には冷たい瞳で俺を見下ろすフレミィ。手には木製の長剣。 「あんた、ホントに弱いわね」 「うっさ、い……。ついこ、ないだまで、一般人だ、った奴が戦い方なんて、知るわけね、だろ……!」 「そもそも、何で毎回違う武器なのよ。いい加減一つに絞りなさい」 コンコンと剣の先で俺の頭を小突くフレミィ。振り払ってやりたいが、既に指先すら動かすのが辛い現状。 はあ、と溜息を吐くとラクス、と呼ぶフレミィ。 「い、嫌だ……。来るなぁ……」 駆け寄ってくるラクスが、今は酷く恐ろしく見える。普段は良い。だが、今は……。今だけはっ……! 膝を着いて俺を見下ろす、気遣うような瞳。それは何時も通り。いや、何時も通りでないのはおれであり、ラクスに非があるわけではない。 ただ、 「『傷つきし者に癒しの光を与え、その身の疲れを拭い給え。治癒の清光(せいこう)』」 徐々に痛みや傷が、疲れまでもが癒されていく。ああ、ありがたい。これが普段ならどれだけありがたいことか……。 だがしかし。今のこの状況ではあいにく、有難(ありがた)迷惑以外の何者でもない。何故なら……、 「よしっ、治ったわね。じゃ、もう一戦行くわよ!」 地獄の特訓が待っているから……。
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