学園天国

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春というのは始まりの季節だ。 植物は芽吹き、動物は冬眠から目覚め、人間にとっても起点となる。 ようは、真新しいスーツに身を包んだ新入社員が街中に散見される季節だということだ。 僕もその例外に漏れず、今年、中学生から高校生へと身分を格上げする。 青春の黄金期、高校生活である。 そりゃあもう期待一杯夢一杯の、ある意味人生全盛期なわけで、存分に謳歌してやろうじゃないのと意気込みまくっている。 具体的に何をするかは決めていないが、そこらへんは成り行きだ。 とにもかくにも、胸踊る要素がふんだんに含まれた高校生活を前に、僕のボルテージは最高潮だった。 「───えー、以上で入学式を終了します」 と、そんなことをつらつらと考えていると、神経質そうな男性の声が耳に入る。 前を見れば、頭髪が少々寂しい……えと、確か教頭、が壇上から降りていくところだった。
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