見せかけ探検部

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てっきり我々は、力比べでもするのか? くらいにしか捉えていなかった。 もしそうならば、なかなかいい見世物になるとも思っていた。 だが、違った。 轟教師はおもむろに関本君の胸倉を掴むと、そのまま片手でブン投げたのだ。 関本君のやたら縦に長い体がゆっくりと宙に浮くのを、我々はどこか夢でも見ているような気分で眺めていた。 直後、ズドン! と腹に響く重低音。 見事な片手背負い投げをを決められた関本君は、その場で昏倒していた。 「授業の風紀を乱すようなやつは今後このように処分していく。肝に銘じておくように」 特に罪の無い関本君を地面に叩きつけておいて、先生から出てきた言葉はそれだった。 そんな有様を見せられた以上、轟教師に反抗することはまんま死を意味する。 関本君を除く1-2男子はその後の体育授業を、統率されたドイツ軍のごとく粛々と受けた。 いまだ交流も浅く結束力に欠ける我々だったが、この時ばかりは危機を感じ教室に帰還するや否や緊急会議を開いた。 それにより決定された掟は、 ・体育時の私語は慎むべし ・轟教師に反抗する無かれ ・上記に違反した時のため、遺書の用意は各自で済ませておくべし という上記の三つ。 そして轟教師をコードネーム『ゴリラ』と名づけ、恐怖の始まりである本日を『Flying Sekimoto Day』(空飛ぶ関本君)とし、後に語り継ぐこととした。 そんなこともあってか一刻も早く家に帰り、ゆっくり休みながら録画した金曜ロードショーに目を通したい所だったのだが、今日は事情が違った。 放課後から、部活見学が始まるのだ。 中学時代は科学部の幽霊部員として活躍していた僕だが、高校ともなるともう少し真面目に活動するべきだろう。 部活を通じて交友関係も広がるし、何か青春してる感じがする。 そんな訳で、とりあえず玄関近くに設置されている学校の掲示板へ向かう事にした。 新一年生達が餌を見つけたアリのように部活勧誘の貼り紙に群がる中、僕は一歩退いた位置で、遠目から掲示板を眺めてみた。 理想的には、文学部、もしくは映画研究部辺りに入部したかったが、ここから見た限りではその二つとも存在しなかった。 ん~、悩まし。 仕方がない。 最近の体力不足を補う為に、運動部も採用候補に入れて再検討。
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