うねり

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 このタイトルをつけて書こうと思ってからどれほどの月日が経ったろう。もう一年も経ったのだろうか。  久々にここに来てタイトルを目にした時、その時何を書きたかったのか何となく思い出す。うねり。  うねり、という言葉はそのままdynamismという言葉、イメージに私は結びつく。大海の、白波の立たない山と谷、内側に大きく溜め込んだエネルギー。何かを、どこからかどこかへと運んでいくエネルギー。  そういうものは、至るところにあって、私は布団や机やコンクリートの建物、車、何でもいい、手を当てて、渦巻くような循環するようなエネルギーを感じとる。それは自分を包み込んでもいて、その抗いがたいエネルギーに私は押し動かされている。  まったく物理的、現実的ではないけれど、私はそういう感覚が強くあって、例えば人との会話においてもそのエネルギーのやり取りというのか、エネルギーの流れ、行く先を追っているのだと思う。内容ではなくて。  私の接する日常の多くの会話はどこか欺瞞に満ちていて、素直さに欠けている。それは言葉が目的を正確に伝えるために使われていて、心象であるとか、感情が抜けた状態にあるからで、その言葉自体にエネルギーがないものだから、その背後にある目的や経緯を理解するというより、糧として得るためにそういう捉え方になったのではないかと思う。  文学における言葉。手紙における言葉。そうした言葉は読んでいて自然に緩急が生まれてくる。何故なら、自分の意思や想いをどう託そうかと懊悩したものが一語一語に異なる比重で以て宿るからだ。  私は近頃、上手く会話が出来ない。考えてることや思っていることをすぐに言葉に出来ない。話すまでに、時間が要る。出来るだけきちんと喋りたいと思うと言葉がつまる。口が重たくなる。  口の中をうねらせて、開くのを待たなくてはいけない。それだと中々会話にならないから話したくない。  本を読むようになって、言葉を書くようになって、凪いでいる時間が訪れるのは孤独だ。水面に映る景色が波紋を生めばよいのにと願いながらも、ノートは白紙のまま。その水面に風景ばかりで、自らを映すのを忘れたから、いや恐れたからだと漸く気がついた。
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