絵画

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 名古屋に住んでいた折り、ダリを見に行った。後に知ったのだけれど展示されている絵画のほとんどがレプリカで、本物は三枚?しかなかったのだが、わたしの気に入った数点の絵は、本物だった。当時そのことに得意になった気もするけれど、たぶんそれはその絵が本物だからだと思うし、芸術家にのみ持ち得るものが絵画に宿るから、本物として成立するのかもしれない。  絵画については解説書の類いをまったく読まない。小手先の知識を身に付けたところで目が曇るだけだから必要ないと思っている。絵画に対して正確にアプローチするためには、絵の技法や知識、意味合い、作者のバックグラウンドである生い立ちだとか、どういうものに影響を受けたとか、知っていたほうが良いのかもしれない。けれども、それを知ることでわたしから絵画が近づいているようで遠ざかる気がしてならないのだ。  物事を知るには限りがある。それが理に関するなら尚更で、数多の作品を眺めてそこから浮かび上がるものがわたしの視点であって、わたしの真実である。このスタンスは本を読むときや、音楽を聴くときも変わらない、変わらないけれど、その理解に差が出来るのはそこに行為という検証が加わることからかもしれない。  読むように書く、奏でるように聴き、そこに表された感情、それを受け止めるわたしの感情、そこに漂う雰囲気、それらが含まれている空間にどう触れるか、であって、それ以上でも以下でもない。
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