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髪を金髪にしてみた。 とある折りに私は、5000円で髪を金色にした。 一年近く放置した髪は、文字通り伸び放題で実に欝陶しかったが、長めの金髪は存外悪い気分ではない。 おそらく、こんな事をするのは一生の内でこれくらいだろうということは自覚していたから、「折り」が過ぎても髪はそのままにしておいた。 ある時、母がドラマを見ながら言った。 「髪、この人みたいにしたら?」 私はその金髪の若い俳優は好きだったから、肯定的な適当な返事をした。 その日、床屋に連れていかれた。 私は、髪を切った。 やや短髪とは言い難い長さで、結果として私は、その髪型を大変気に入った。1000円でやってもらったのが申し訳無いとさえ思った。 幸い周りからの評判も悪くなかったから、クロが伸びて来て短く切るまでの一ヶ月は、このままでいるつもりだった。 しかし、さらに私は髪を切った。 また母に言われたのだ。何故そんな事を言ったのかは、今の私にはわからない。 自覚としてそんなに親に従属しているとは思わないが、無条件で私は髪を切りに言った。家の近くの、1000円。 かなり短くなった。私は憤慨した。汚い。 中途半端なクロと金。猿みたいで嫌だった。 文句を言われた母は言った。 「別にフツウだよ。ね?」 促された妹が頷く。 「うん、フツウ」 もやもやした。 フツウな髪型は、おそらくチンピラがするそれとほとんど相違なかった、というかそれそのものだったが、さしたる事は引き起こさなかった。 といっても、あらためて会った友人に驚かれたりだとか、東京駅で警官とお話することになったりはしたのだが。 ともかく、私は、金髪は好きだった。
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