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「……どう……して」
「どうしてって……俺はバイトの帰りだけど?」
そう言いながら女上君は私の腕を掴み、ぐいっと引っ張り上げてくれた。
お礼を言おうと女上君の顔を見ようとすると、かなり見上げなければならなかった。
女上君が大きいのではない、私が特別小さいんだ。
「ありがとう……女上君んちはここらへんなの?」
「ん、まぁな………響はこんなとこでどうしたんだ?」
「私は………」
そこまで言いかけて、再び嫌な光景が頭に浮かんだ。
またしゃがみこもうとすると、女上君が私の肩を持ち、支えてくれた。
「お、おい!どうした、顔真っ青だぞ!」
「へ?………うん、だい…じょうぶだよ?」
「どう見ても大丈夫じゃねぇだろ!家どこだ?送ってくから」
「ありがと………えっとね………」
家……いえ………………ここがどこだかわからない。
それに…………帰りたくない。
「帰りたくないってなんで…?」
「はれ?私、今口に出してた……?」
「あ、ああ出てたけど……」
「そっかぁ……恥ずかしいなぁ、私」
なんだろ………何も考えられない。
それになんだか視界が霞む。
女上君の声が遠ざかり、私はゆっくりと目を閉じた。
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