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頭の中に会ったこともない寛の家族達と寛が食卓を囲みながら団欒している様子が出てきた。
さっきまで惨めで寂しい自分を演出していたのに、本当に惨めで寂しくなってしまった。
寛は電話が切れた後、車を降り、家の中に入り子供達を寝かしつけたりリビングでニュースを見たりしているのだろう。
寛は家にいる時は自室にこもっていると言っていたが、亜紀には信じられなかった。信じようとしていたが…。
そして、寛が死ぬ時のことを考えた。
もしこの先寛が病気になったとして私はお見舞いに行けるのか…。
その病気が悪化して死んだ時お葬式にいけるのか…。
仕事の関係者として行くことはできるだろうが、それ以下でもそれ以上でもない。
しかも女の勘とはするどい。奥さんが亜紀のことを不倫相手と感じとることもあるだろう。
そんなところに私は顔を出せるだろうか。
事故で死んだ時など、心の準備ができないままいきなり寛を失うのだ。
寛の遺骨欲しいな…。
亜紀は漠然と思った。
そうでないと寛が死んだ時寛と亜紀には何もなくなってしまう。
所詮愛人ってそんなもんか。
亜紀は妙に納得した。
自分の愛がどれだけ真っ直ぐで純粋だとしても端から見れば不倫と一纏めにされる。間違っても恋だの純愛だの言われないだろう。
亜紀は自分の気持ちを言い表されなかった。
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