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「先輩、あれ何ですかね?」
ビル清掃員の吉田が先輩の杉本に言った。
「あー」
二日酔いの杉本は、不機嫌そうに答えた。
杉本は、中堅商社の営業マンであったが、リストラされ今は貯金を切り崩し、アルバイトでなんとか生活している状態で、いつも不機嫌なのである。
よしだの指差した所には、草だろうか花だろうか何かの芽が出ていた。
「知らねえよ。何かの草だろ」
「そんなの見てないで仕事しろ。さっさと終わらせて帰るぞ」
杉本は、そう言うと窓にスプレーをして掃除を始めた。
「すいません」
吉田は、その芽を気にしながら仕事に戻った。
『こんなビルの壁から芽が出るのか?普通出ないぞ』
吉田は心の中で不思議に思いながら、不機嫌な杉本に怒られないように仕事を続けた。
『そうだ。携帯で撮っとこ』
吉田は、ふと思い付き携帯で1枚その芽を撮影した。
その芽は、数日後新聞の小さな記事として紹介されたが誰も気にすることはなかった。
それが、あの最初の発見であった事を今は、まだ誰も知らない。
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