生徒会長の憂鬱

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悪循環だ。彼はにがにがしげに子供たちを見た。 親の苦労や努力を知らない子供たちが、いざ親になってみたところで、どうにもならない。良い親になれるはずもない。そんな親から巣立つ子供も、良き未来には進めない。 「何考えてんだ…俺…?」 そう自嘲気味に呟くことで、悲観的になってしまっている自らの思考を一時的に取り去ることしか、今はできなかった。 「お帰りなさい」 家に帰ると、まだ幼い弟が彼を迎えた。先程の子供たちと同じ位の年である。こいつも俺の苦労を知らないのだろうか…そう思うと、胸が締めつけられる気がして、気分が悪くなった。そんな兄の姿を見て、弟は眉をひそめた。 「疲れてるんですね。何か出しますよ」 そう言うと、おもむろに駆け出し、リビングの食器棚からティーカップをひとつ出してきた。 「紅茶がよかったですね」 小さな手で茶葉を取り出し、計量スプーンを細い指で持って、ティーカップにちびちび注いでいく。リビングの椅子の上に立ち、細い足をぐらつかせながら、一生懸命兄をいたわろうとするその小さな姿に、彼は長らく感じていなかった感覚が湧きあがるのを感じた。
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