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中庭のベンチで、彼は背を丸めて座っていた。
鼻をすすり、目をこすりながら、ただ、涙が止まるのを待っていた。自身、ひどく醜い顔をしているのではないかと危惧した。こんなに泣いたのは久しぶりだ。涙腺が緩いのか涙もろい性格なのかは判別がつかなかったが、よく彼は泣くことがあった。しかし、発狂するほど泣きわめいたことはほとんどなかった。
1時限目の始業を告げる鐘の音が聞こえたが、彼はそれを無視した。この顔では授業に出れない。出れたとしても集中できない。何より、クラスにいる先程の喧嘩友達と顔を合わせるのが辛かった。
生徒会長にあるまじき行為だな、と溜め息をついた。授業に出席しない会長なんぞに、他の生徒会役員ないし生徒たちが信頼を寄せるものか。結局、すべて同じだ。自分はひとりだ。誰も、自分を、本当の自分を見てくれやしないのだ。
そう思うと、また悲しくなってきて、彼はうなだれた。
今日だけで、人生の半分くらい泣いたんじゃねぇのかな、とぼんやり考えた。
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