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昨日と変わらない、帰り道。
家に帰ったら、きっと弟があたたかく迎えてくれる。そこに楽しみを見つけることしか、今、彼はできないでいた。
「おーい!」
後ろから声がとんできた。周りに人影はなく、その声が間違いなく自分に向けられたものだと判断したため、彼は後ろを向いた。
「今一人かい?一緒に帰ろうよ!」
最近、クラスが離れて疎遠になってしまっている幼なじみだった。同じ生徒会の役員であるために、昨日の会議を無断欠席したことを問いただそうかと考えたが、ふしぎとそれを行動にうつすのはためらわれた。
「今日はもう疲れたよ!持久走がさぁ…」
今日あったとりとめもないことを幼なじみが話しはじめる。
「俺最近太り気味だから運動キツイんだよなぁ」
その言葉を聞き流しながら、彼はぼんやりと前を見つめていた。
いつの間にか学食の話をしている幼なじみをちらと見る。
昔はよく手をつないで歩いたものだ。自分のほうが幾分か年上で、よくあの小さな手をひっぱってやった。
自分が少し速く歩きすぎて、幼なじみの手を離してしまうと、幼なじみは待って、待ってと言いながらよちよち後についてくるのだった。まるで、生まれたての皇帝ペンギンさながらに。
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