暗の事

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『人斬り』田中新兵衛。 人斬りと呼ばれるにしてはあまりに普通の人間であった。 恐らく、自ら名乗らなければ100人中100人が彼の男が人斬りだとは思わない筈である。 煉次郎は、偏見も若干混じっているが、薩摩出身の人斬りである人斬り新兵衛と聞いて、筋骨隆々な醜男を想像していた。 しかし、目の前の田中新兵衛はどこか知性を感じさせ、見た目も筋骨隆々と言うよりは、猫のような柔軟性を持っていそうな感じであった。 煉次郎は予想と懸け離れていて残念と言うか、人斬りという人間が誰しも常に物騒な人間ではない事に安心したと言うか、よく分からないが安心していた。
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