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きんちゃんは、
私が怒りながら泣いても、
黙って、ちょっと揺れながら、
私を抱っこしていてくれた。
そして窓の側に行って、
窓をほんの少し開けた。
『メイ、雪が降ってるよ』
さっきまでは降っていなかった雪が
ほんのちょっと舞っていた。
私は返事をしないまま、
きんちゃんの腕から手を伸ばして、
窓枠に積もった雪を集めて
雪だるまをひとつ作った。
いまにも溶けてつぶれそうな
目も鼻もない、
てのひらサイズの
歪んだ雪だるまだった。
作り終えたころ
私は泣き止んでいた。
きんちゃんに対する怒りも
もうなかった。
胸がすかすかするような
寂しさだけが
残っていた。
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