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ペーターの家は私の家より少し山を登った辺りにあった。
でもペーターは遠回りをして、私の家の前を通らなかった。
家に入ると、白髪と白髭のおじさんがゆっくり寄ってきた。
「おかえり」
彼はドイツ語で言った。
ペーターは無言のままで私を前に押し出した。
私の髪は涙で頬にはりつき、
口の中は切れて血の味がしたし、
腫れた唇のせいで口は閉じられなかった。
ペーターは早口のドイツ語でなにか言うと、
部屋の奥から包帯とぬり薬を持ってきた。
ペーターは傷の手当てをしてくれる間、私の顔を見なかった。
悲しそうな顔だった。
本当に悲しそうな顔だった。
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