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温かい。
珍しく布団に入って寝たんだなぁ…いつもコントローラー握り締めて、崩れるように寝てるから。
もしかして、乙女ゲー、やってなかったのかな。珍しいな、あたし。
…あれ? なんか忘れてるような気がする。
『ハニー、おはよう』
この声とセリフは。「『大貧民と王子様』のハイネロイド」じゃん。
あのキャラも、デレてくれるまで大変だったよなぁ。あの頃は今みたいなクイックセーブ機能なんてなかったから…フルボイスでもなかったし。
と考えて、はた、と止まる。
このゲーム、持って来てたっけ? 実家に置いて来た気がする。限定ボックスに付いてきた『ボイス付目覚まし時計』は、かずちゃんに分捕られたし。
『君、もしかして、俺のファン?』
は?
そんなセリフ、ハイネロイドは言ってない。
何より。
「ハイネロイドは『僕』キャラだー」
目覚めたそこには、茶髪のおにいさんが、嬉しそうに人の顔を覗き込んでいました。
誰だ。
そう問い掛ける前に。
「おはよ」
その声は「…鳳鋼(おおとり こう)…?」
おにいさんの目が見開かれ。
「やっぱり、俺のファン?」
なんだか喜んでくれているよう。
確かに嫌いではないのですが。
「どちらかというと、逸樹真さんのファンです」
「えー、あいつより俺の方がイイ男だよ」
真面目な顔で言われましても、「ある程度、低音域の響きのある声が好きなので」
「…顔は?」
「…なんで『顔』?」
声の話しでしょ。
しばらく見つめ合ってしまいましたら。
「昴! お前、どこっ!」
うぴっ!? 何故にここでこの声?!
鳳さんを跳ねのけるように身を起こして、違和感。
身体を覆う、だぼったTシャツは男物。
「昴! お」「うぎゃあぁぁぁぁっ!!」
朝の澄んだ空気を切り裂くような悲鳴が、出ておりました。
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