序章

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純白のワンピースを身に纏った少女―― 歳相応とは言えない長く綺麗な白髪と 太陽の光さえも透過しそうなくらい 真っ白で透き通った肌 整った顔立ちの中に丸い紅眼 この日常的風景の中で明らかに目立ち過ぎる容姿 周りは誰一人としてその少女を目にしない (僕にしか見えていない…?) 少女がこちらに近付く度に鼓動が早くなる そして少女は僕の目の前で立ち止まった 他の誰でなく、僕の目の前で 『貴男はこの世界が嫌いなのね…』 不意に聞こえた声は耳から入ってくるものとは違った 頭に直接語りかけられる様に 頭の中で響く 『私が変えてあげる… この世界を…貴男の世界を』 その声は少女の様に柔らかく しかしどこか重く頭に響いた 最後の言葉が響いた後 少女は柔らかく笑みを浮かべた その笑顔に見とれていると 突如として強風が横から吹き付け――思わず目を閉じてしまった 気が付けば少女の姿はどこにもなく 遠くから始業を告げる鐘の音が聞こえるだけだった。
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