『YOU'RE THE ONE』

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-私の、可愛いヒト- -貴女の、名前が好き- 現在、午後2時。 今日のスケジュールは、とっくに消化済み。 私としては午後いっぱいレッスンを続けるつもりだったが、律子(我らがプロデューサー殿だ)に 「過ぎたるは及ばざるが如し」 などと言われてレッスン場から追い出されてしまった。 ほぼ、半日の。 突然の休暇。 当然、何の予定もない。 で。 何をするでもなく事務所に戻って来て、 来客用のソファで自分の淹れたコーヒーをすすっている。 午後2時。 次の仕事の脚本をチェックする。 三度目。 春香が事務所の冷蔵庫に作り置きしてるババロアを取りに行く。 二度目。 コーヒーを淹れてくる。 四度目。 …壁の時計を見る。 八度目。 独り、には馴れているけれど。 さすがに。 事務所内で起こる物音が全て自分のものだけ、というこの状況には飽きていた。 ましてや。 普段なら誰かが2~3人居て。 かしましいのが当たり前の場所であれば尚更。 帰ろうかな。 帰って、声楽の本でも読んでいる方がよっぽど有意義な時間になる…そもそも。 なんで私は事務所に居るのだろう。 レッスン場から直接帰宅、という選択肢だってあったはずなのに。 なんで。 「お疲れ様です~…あら、千早ちゃん」 その声は。 ちょうど私の腰の形に馴染んでしまったソファーから立ち上がりかけたのを、座り直させるのに充分過ぎる理由になった。 「お疲れ様です、あずささん」 きっと。 この人が来る予感のようなものが私の中で働いていたに違いない… それが、『なんで』の答え…きっと。 「千早ちゃん、今日はもう帰ったって律子さんが言ってましたから~誰も居ないかも、って思ってたんですけど」 ゆったりと笑み、対面のソファーに座るあずささん。 少し暑そうに片手で顔を扇ぎつつ。 「でも。千早ちゃんが居てくれて良かったです~」と、破顔。 嗚呼。 この可愛いヒトと。 二人きりになれるなんて…て? そう言えば。 ふと思い付いた疑問をぶつけてみる。 「あずささん、一人でここまで来たんですか?」
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