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あずささんは極度の方向音痴…一人で戻って来れるはずが無い。
つまり…
「あぁ~やよいちゃんと一緒の仕事でしたから…ここまでは一緒に来たんです~」
中学生に先導してもらったコトが恥ずかしかったのだろう、頬を染める目の前の人。
「そうですか。それで高槻さんは…?」
「いつも利用してるスーパーの、タイムサービスの時間だとかで~…悪いことしちゃったかしら?」
一転、眉をひそめて口元に手をやるあずささん。
「…まぁ。スーパーの方は…たぶん高槻さんにとっては日課のようなものですから。あまり気にしてないと思いますが」
そんな顔は見たくない。
ので、やっつけの気休めを吐き出す私の口。
「きっと戻って来る時から…今日買うものを頭の中で整理するのに忙しかったでしょうし」
「あ~そういえば、ずっと何か呟いてましたけど…あれ、今日買うものだったのねぇ」
笑顔が戻る。
気休めの勝利。
それはそうと。
ならば、やはり今この場所には。
私とあずささんの二人しか居ないということになる訳で。
「…あずささん、飲み物はコーヒーで良いですか?」
少しでも長くこの状況を楽しむ為に布石。
いきなり帰られたら堪らない。
「あ、はい~」
上品に微笑んで。
軽く頭を下げるあずささん。
そのてっぺんで揺れる癖毛。
それらを見ながら、私は心底必死で…何か盛り上がるような話題はないかと考えていたのだった。
そんな午後。
-私の、愛しいヒト-
-何処へも、行かないでね-
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