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呪縛が解けたかのように、私は香澄の元に駆け寄った。
車のバンパーが香澄の腹部に食い込んで潰れている。
「……麗子様……無事で……」
香澄は計画を見守るために、現場にやって来ていたようだ。
そして、その身を呈して私を助けてくれた。
香澄は所詮、雇われ人だ。
私にとっては物や道具でしかない。
長年付いていた片山ですらそうだった。
そのはずなのに、私は目から熱いものを流していた。
香澄に生きて欲しい、これからも私に仕えて欲しいと心底願った。
「救急車は呼んでおいたわ」
背後から耳元で囁いたのは白石だった。
「これからも何度だって救急車くらい呼んであげる。私の周りでこんな事が続く限りはね」
怒りを超越して、私の魂を恐怖が支配し、白石と関わる事を拒否していた。
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