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「毎日来るから欲しいものがあれば言いなさい」
「そんな……。恐縮です」
香澄の表情は変わらなかったが、声の質がその気持ちを伝えていた。
麗子が病室を去ってからしばらくすると、ベッドに振動音が響いた。
香澄がシーツ内から携帯を握った左手を出す。
ディスプレイには“伊達小夜子”と表示されていた。
「はい」
押し殺した声で香澄は通話に応じた。
「ええ。御命通り、白石には第三者として、予めリークしておきましたので無事です」
香澄の仮面のような表情は変わらない。
「はい。狙い通り、麗子様は腑抜けになられました」
話しながら、香澄の目が期待に満ち溢れて輝き出した。
五十嵐家に、真の女王が君臨する事を信じて疑わない目だった。
<ミステイク3・完>
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