222人が本棚に入れています
本棚に追加
マスコミが騒がなくなれば、世間は簡単に冷めた。
そして、手首を切られた香澄は、口止めとしてたんまりと財を得たものの、引き続き五十嵐家に仕えている。
もともと身寄りがなかったのと、父も香澄が世間に出るよりも、監視が行き届く方が都合が良いので雇ったままにしていた。
片手がないので、あまり人前に出るような仕事はできないが、 何よりも真面目で一生懸命だったので、現在も勤まっている。
そして今回、香澄は死んだ片山の穴を埋めるべく、私の付人になった。
かほりの部屋が変わっていないのは、香澄が欠かさず掃除しているからである。
「いくら掃除してもかほりは帰って来ないわよ」
「はい。心得ております。ここを掃除するのは、私にとっての戒めなのです」
最初のコメントを投稿しよう!