222人が本棚に入れています
本棚に追加
独り言のつもりだったが、いつの間にか香澄が背後に立っていた。
少し驚いたが、香澄の物腰から察するに、物思いに耽り過ぎた私が気づかなかっただけのようだ。
グレーの質素なワンピースは、使用人の制服。
あか抜けない白いだけの顔と太い眉毛。
黒髪は邪魔にならないように輪ゴムでまとめている。
洗練とは程遠いが、清潔感は溢れていた。
「戒め?」
「はい。私がかほり様を止める事ができていれば、誰も傷つかずに済みました……。今後繰り返さないための戒めでございます」
深々と頭を下げる香澄。
余程の事がない限り、義手をつけないのもその為だろうか。
何にしろ、香澄の五十嵐家に対する忠誠は厚い。
五十嵐の家を、私を守るためなら、命を平気で投げ出すだろう。
そして、白石を殺害する事に、喜んで協力してくれるはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!