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序章
題名 ~魔王について思うこと~
1年D組10番 アイル=スミス
遥か昔、魔王と呼ばれる破壊者が居たことは皆知っているだろう。
魔王と呼ばれる破壊者は、それは耽美な容姿をしていたと言う。 だが、魔王と呼ばれる破壊者の文献は大雑把すぎる容姿のことと、戦争の際の惨状程度しか記されていない。
やれ、昔の神聖を名乗る宗教軍団が記そうとした人々を虐殺した。
やれ、思い出すなど不可能なほどに痛め付けられた。
そういう、幼稚な仮説しか今の歴史学者は話せない。
それと言うのも、今の歴史学が停滞しているせいだと、私は思う。
何故、歴史学が停滞するか。 それは、政府にとって、国にとってバレてはいけない何かがそこにあるからだと私は思う。
かつて、英雄が世界を救済した戦争として名付けられた、その名も“英済戦争(エイサイセンソウ)”。
正直言わなくても、ネーミングセンスの欠片が見当たらない名前だ。
まぁそれは、今はどっかに蹴り飛ばそう。
とにかく、魔王と呼ばれようとも、破壊者と呼ばれようとも絶対に何かキッカケや、はたまた陰謀やらがあるはずだ。
だから私は、魔王については嫌いではない。むしろ好意的だ。
これで私の意見は終わる。
「ふざけているのか?」
それは今、前の時間で書いた意見文を今一度聴き、何度も何度も、自分が書いた意見文だというのに頷き続けたアイル=スミスの耳に伝わってきた。
重く瞑った(ツムッタ)瞼(マブタ)を開くとそこには壮大な太陽が在った。
時折滴る汗の雫に光が乱反射し、その砂漠とも言える仄か(ホノカ)に赤みがかった太陽が在ったのだ。
それは明らかに眩しくて、それでいて眼をそらせない光景だった。
「答えろっ!」
太陽がプロミネンスを放出した。 なんと恐ろしいことだろうか。
これは自分が抑えねばならない。
「待ってください。僕じゃない、もう一人のアイル=スミスが書いたのじゃ無いんですか?
ほら、よくあるじゃないですか?太陽神様?」
「何が太陽神だっ!」
そう一声すると、その太陽はまた紅に染まった。
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