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歳は二十代後半頃。身長は高めで、体格からして男だ。
訝しみながらもユウキは、その男の横を通り抜けてすれ違いざまにペコリと会釈をした。普段はそれで済ませている。
しかしその男は、ユウキがやや通り過ぎた頃にぽつりと呟いた。
「……運命の歯車は、動き出した」
「え…?」
「ユウキ、どうしたの?」
どうやらユリカには聞こえていなかったらしく、不思議そうな顔をしている。
どう答えようか悩んでいたその間に、黒服の男は姿を消していた。
「……何だったんだろ」
「全身真っ黒な格好をしていたけど、知り合い?」
「まさか。この村の人じゃない感じだったし」
「ふーん。とりあえず行こっ!」
「うん…」
黒服の男がいた所を眺め続けながらも、ユリカに急かされてユウキは足を運んだ。眺めていた所がどんどん遠ざかっていく。
どうしてもあの黒服の男が気になっていたユウキは、足元が不注意になり……。
「わっ!」
スベシャッ
転んでしまった。
「あんな子供なのに……なぜリーダーは気にするんスか?」
言葉を発したのは、先程ユウキ達の前に現れた黒服の男ではなく、二十代前半くらいの若い男だった。軽い口調が特徴で、火薬の臭いが染み付いた黒いローブを着ている。
若い男が話しかけたのは、ユウキ達の前に現れた男だ。
リーダーと呼ばれたその男は、重々しい口調で答える。
「あの子供は、凄まじい力を………世界を変えてしまう程の未知なる力を秘めている。その力が、我々には必要なのだ」
「でも、オイラ的にはただのひ弱なガキっスけどね~」
「しかし、事実なのだ」
「ふーん。ま、オイラはあんたについていくだけっス。なんか楽しそうだし」
「……アジトに戻るぞ、ザード」
「ウイっす!」
ザードと呼ばれた男の返事と共に、二人の姿はそこから消えていた---
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