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「こんなところに病院があったなんて……」
かなり病院に近づいた、そのとき-
「きゃあぁぁ!!」
「え…?な、危なっ-」
ドーンッ
ユウキの上に、二階から少女が降ってきた。しかも、かなりの勢いで。
その場でユウキは気を失ってしまった……
「どう…?目を覚ましそう?」
「大丈夫だよ。見たところひどいのは、頭のたんこぶだけだから…」
うっすらとだが意識が覚醒してきて、ユウキはそんな会話を耳にした。声は少女のものと、男性のものだ。
身体を起こそうとしたユウキに、医者の格好をした男性が気づいた。
男性は見た感じでは若く見える。よれよれの白衣に、ボサボサの髪、少々やつれているのは自分の気のせいだろうか?
男性はふっと笑って、ユウキの身体を支えてくれた。
「大丈夫かい?吐き気はする?目眩は?胸が苦しいとか、そんなことはないかい?」
「あ、えっと…平気です」
多少頭がジンジンと痛んでいるが、問題はないだろう。
そのことを伝えると、男性は苦笑しながら頭をかいた。
「ごめんね~。ユリカちゃんがいきなり二階から落ちてきて、ビックリしたでしょ?」
「あ~……少しだけ」
「彼女、脱走の名人だから……」
そう言いながら指差した方に、先程二階から落ちてきた少女がいた。顔は俯いていて、あまり見えない。
見た目十三歳くらいの少女で、茶色の髪に黒い瞳をもっている。服装はどこから見ても入院している人が着るような服で、患者だとすぐに分かった。
しかし、なぜ患者がいきなり二階から脱走しようとしたのだろうか。
そんなことを考えていると、男性が少女のことを紹介してきた。
「えー、まず……この娘はユリカちゃん。十四歳の女の子だよ。とある事情で、この病院に六年間入院しているんだ」
「とある事情…」
気にはなったが、触れてはいけないと思い、聞くことをやめた。
試しに、ユリカと紹介された少女に視線を向けてみると、かなり暗い表情をしていた。
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