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「今日から君の話し相手になってくれる、ユウキ君だよ」
「………」
男性に言われて、ユウキをじいっと見るユリカ。なんだか視線が痛い……。
しばらくはユウキを品定めするように見ていたが、そのうちふいっと顔を背けてしまった。拒絶されていることは明白だった。
「……話し相手なんて、いらない」
「ユリカちゃん……、いつまでもそんなことじゃ、君がつらいだけだよ?たまには、人を信用してみても良いんじゃないかな?」
その言葉に、ユリカは俯いて肩を震わせていた。一瞬泣いているように見えたが、そうではなかった。
ユリカの表情から読み取れたのは、怒り……。
「………信用なんて、できる訳ないじゃない…………あんなことがあって、どうして人を信用できるの!?」
その悲痛な叫び声に、二人は何も言えなくなる。
ユリカは二人に背を向けて、叫んだ。
「出てって!!もう私のことなんか、ほっといてよ!!」
少女の心は、哀しみに満ちていた……。
「……はぁ…。やっぱり話せなかったか……」
「あの………なるべく会話を続けるようにって、このことだったんですか?」
「ああ。いつも話そうとすると、この有様だ。どうにかしたいんだが………」
あの後病室を出た二人は、廊下を歩いていた。
ユリカという少女は、何か哀しみを抱えているようで、ユウキはそれが気になった。
もう一度、話してみよう……
そう決心するまで、そう長くはなかった。
くるりと踵を返して、先程の病室に向かおうとする。だいたいどの辺かは覚えていた。
ユウキの様子に気づいた男性が、不思議そうに尋ねてくる。
「ユウキ君?…………戻るのかい?」
「はい。なんだか気になって………」
「……そうか。じゃあボクはいない方が良いかもしれないね、さっきのことがあるし」
自嘲気味に言った男性にかける言葉が見つからず、ただお辞儀をして病室に向かった。
先程の病室に戻ってくるまで、そんなに時間はかからなかった。ほんの数分程度だ。
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