17人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
背の高い木々が生い茂り辺り一面を清廉な緑一色に染める森の中を、毛並みの良い二頭の白馬がそれぞれ髪の長い女と短い女をその背に乗せて軟らかな黄土色の地面に足跡をつけ軽快に駆けている。
一方の白馬に跨る女性は肩まで掛かる金髪を揺らし、その下に隠れた切れ長の目で真っ直ぐに前を見据えている。
彼女が跨る白馬がその毛並みを揺らしな一歩一歩踏み切る度に、両肩、手の甲から肘、胸、膝下から先にそれぞれ付けられた銀色の鎧が跳ね金属音を響かせていた。
鎧の下には太陽の様に暖かな赤い麻のシャツに膝までの茶色のパンツを履いている。
茶色と銀の間から見える細い脚とそれに見合う細腕で手綱を取る彼女の腰元にはおよそ似合わない無骨な銀の長剣が下げられ、腰元で跳ねる長剣の鞘と胸当ての左胸には円の中に三日月の入った印が彫り込まれてありその輪郭は鈍い赤に染められている。
「姫様、そろそろ戻りませんと……」
鎧の女は切れ長の目を隣で長い髪を風に靡かせ併走する女性に目を配り、少し低いと思われる声をかけた。
「そうですねメリル、そろそろ戻りましょう」
姫と呼ばれた腰まで伸びた白い髪の女は鎧の女へ一度微笑みかけ、凛とした澄み渡る声で返事を返すと軽やかに手綱を引き、すこしづつ馬の脚を緩めていく。
白馬の脚が止まると姫の着ている純白と朱のドレスと白髪がふわりと浮き、それが下っていくと共にメリルの馬もゆっくりと脚を止めていきその隣に丁度止まった。
姫とメリルは慣れた手付きで手綱を操り馬の向きを反転させると、馬の腹にそっと足を触れゆっくりとした歩調でその歩みを再開させていく。
最初のコメントを投稿しよう!