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馬の脚が短い間隔で地面に数十程の足跡を残した頃、姫はその澄んだ青の目を隣のメリルに向けると、雪のように白い肌に良く映える桜色の唇を小さく動かした。
「メリル、そろそろ私のことは姫ではなくシルフィリア。いえ、シルと呼んで頂きたいのですが……」
シルの口調は優しげなものだが、どことなく寂しげに顔を沈ませている
「いっ、いえ姫様の騎士である私がその様な無礼なことを……」
シルの言葉にメリルは目を見開くと勢い良く首を振りその金の髪を振り乱した。
「そっか……」
シルが俯いたまま小さく返事を返すとメリルは「あっ」と漏らしその慌ただしい動きを止めてしまう。
二人共が口を閉じてしまうと森の中には二頭の馬の緩やかな脚音と木々に停まる小鳥達の囀りが響くだけの静かな森となってしまった。
馬の脚が進む中シルの顔は未だ元気なく沈み地面に向けられている。メリルはその様子を横目で確認すると慌ただしい動きを再開し手甲の着いた手を動かし金属音を響かせている。
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