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―――ドクンッ…ドクンッ
お互い喋らなくて静かな部屋
気まずい空気の中、俺の鼓膜には自分の心臓の音と互いの息の音しか聞こえなかった
俺は今キッチンの椅子に腰掛けている
向かい合わせには母親がおり、顔は下がっていて表情がよく読み取れない
俺はとは言うと、柄にもなく真冬だというのに背中にうっすら汗をかいているのが自分でも分かった
なぜこんな状況になったかというと、母親のひとことからだ
『学校を辞めて欲しい。』
ただそれだけの言葉なのにその言葉は卒業まで後三ヶ月の俺にとって信じられない言葉だった
「……はは、冗談は止めろよお袋。卒業まで俺あと三ヶ月だぜ?そうゆう嘘ならもっと時期を考えて言うべきだと思うけどな。」
母親は分かりやすい
簡単に言えば嘘がバレバレなのだ
今まで色んな嘘を付かれてきたがどれも態度や顔で嘘だと見抜けた
…だから、今回のは嘘ではないって心の何処かでは分かっていた
しかし、余りにも急でしかも内容も内容だ
誰がこんな話し本当だと思うか?
「……涼ちゃん、ごめんね…。」
女でひとつで育ててくれた母親
父親は俺がまだ幼い頃にいなくなった
理由は分からない
だけどガキの頃の俺なんて父親がいなくなった理由を知りたいなんて思ってなかったし、今更聞くのも気が引けるので分からないでいた
しかし父親がいなくても俺を寂しくしないようにと付きっきりに遊んでくれた母親を大きくなるに連れて心配掛けないようにしないとという意志が強まった
なので些細なことは頼まれても言うことは聞いてきたつもりだったが、今回に限っては…
「…………。」
―――何も言えなかった
、
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