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『コクーンメイデン』
地面に張り付いた、砲台型の特殊なアラガミ。自ら動く姿を目撃された例はないが、アメリカ大陸での発見以降世界各地に生息地域を広めている。
細長い胴体に無機質な顔面を乗せた姿は旧文明に見られた案山子やこけしを彷彿とさせる。
「…………案山子がッ!」
吼えつつバスターブレードを薙ぎ払う。刃の直線上に『配置』された『コクーンメイデン』は横一文字に両断され息絶えた。
斬り捨てた相手を一瞥すらせずステップを刻む。足元を生き残りのコクーンメイデンのレーザーが穿つ。
動きを止めたショウゴに狙いを定め、コクーンメイデンがレーザーを放つ───
───直前、橘サクヤのスナイパー型神機のレーザーがコクーンメイデンを貫通。頭部と胴体の狭間、人間で言えば首を撃ち抜きコクーンメイデンの頭部は地に転がった。
「今ので最後か?」
「えぇ、今回は遠距離神機使いとの連携を覚えてもらえば良かったし……それに……」
「それに?」
「いえ、あまりに完璧な動きだったからビックリしちゃって」
「そんな事はない。サポート役が一流だから好き勝手に動けただけさ」
これについては御世辞ではなく本気だ。ターミナルの記述にある極東支部随一の制動力も納得がいく。
彼女は狙撃の才のみならず医療の心得もあるらしい。世話になる事もあるかもしれない。
「ねぇ……もしかしてショウゴ君はどこかで」
「君付けはむず痒いな……これでも22で歳上なんだが……橘、と呼んでいいか?そちらも甲斐なりショウゴなり好きに呼んでくれ」
「……分かったわ、ショウゴ」
強引な話の反らし方でもひとまずは引いてくれる、か。柔軟性は有りそうだし話も通じる。良い女性なのだろう。
「そうだな……あんまり自分の事を話すのは好きじゃないしひけらかす気もないんだが、一つだけ───」
「……何?」
「動きもしない砲台と何ら変わらない案山子モドキに遅れは取らない、今日の任務はそういうことだ」
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