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お互い気づいていないが繋がるものがあった。
「どうせ、僕はお前と比べれば幼稚くさい。けど、式神の方が遥かに幼稚くさいぞ!!」
「はぁー?幼稚くさくて悪かったな。でも、俺の方が黒髪より断然分別はある」
腕組みをして凄む青は章来の後ろ姿を睨みつける。
視線に気づき睨み返す。言い合いが始まった。
「礼儀知らずなお前のど・こ・に・分別があるんだ。ぜひ、教えて欲しい」
「俺は物事の本質や道理を思慮深く考え、正邪をしっかり弁えている」
「フッ」
「鼻で笑うな。喧嘩売ってんのか。売られた喧嘩は喜んで買うぜ」
余裕綽々と身体を伸ばす青の言葉で、章来は長刀の柄に手を走らせる。
「今は下らん諍いをしている場合ではない。だが、貴様等の負けん気が強い所は嫌いでないぞ」
淡々と言い放つ蝶彩は優美な口元に、仄かな笑みを漂わせた。
章来はさっと頬を覆い隠して俯き、忽ち耳が赤く火照る。
青は上機嫌で「心の準備ができていなかった。もう一回言え」とからかう。
「二度も同じ事は申さぬ」
渋面を作り目に映る狭間を何とはなしに眺めた。
ふと偶に思う時がある。人はあの先へ踏み込む事が果たして可能なのかと。見える者しか考えない疑問だ。
光なき暗黒が広がる闇へ試しに飛び込む、馬鹿な真似はしない。濃い妖気に加えて底知れぬ恐怖も感ずる。
確実に鬼と少女は出会すだろう。この異質な妖力に引き寄せられて……。奴は来る。
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