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「陽陰は陰陽師だ」
そして心中で言い添える。通常とは異なった……。
彼は妖を退治するというより、滅ぼす事に快楽を覚え、欲望を満たし心地よさの境地に浸る。
陽陰が消えた方を眺め、蝶彩は周りを見渡した。
妖の死骸は淀みを生む、放置しておけばこの地は間違いなく穢れる。仮に穢れた場合、人が踏み込めなくなってしまう。浄化を施せば地に清浄と安らぎが齎(もたら)される。
「いつまで私にくっついておるのだ。離れろ」
「だって蝶彩がまだ寂しそうな顔をしてたから。俺がそばにいてやらないと」
笑いを堪えた青が蝶彩の髪を撫でる。
怒気を孕んだ声を上げる前に、章来が長刀を鞘から抜き振り翳した。
「悔しいのか。黒髪」
「うるさい」
長刀を無闇に振り回す攻撃を青は避ける。
「貴様等は戯れが好きなのか」
自分が原因で現在の状況になっているとは知らず、冷めた目で少女は黄色い数珠を親指に掛けた。水晶の数珠は濁りなく透明だ。
「夕凪、僕は式神と戯れていない」
「誰が此奴と戯れているって!!」
章来は長刀を鞘に仕舞い、青が口元を歪め外方を向く。
「この地には浄化が必要だ。私がやろう」
「浄化なら僕がやる」
蝶彩にこれ以上無駄な妖力を使わせたくない。それは紛れもなく章来の本意だ。
その本意を読み取り嬉しく感じたが苦笑する。
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