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「私の妖力を心配しておるのか」
「そ、そんなんじゃない」
「ならば心配はいらぬ」
口元を緩ませた蝶彩の顔に一瞬だけ陰りが生じた。
「この身には白妙から否応なく貰った妖力がある」とは章来に明かせない。
異端な白妙の所為で今では異なる二つの妖力が合わさり、強力なものになった。それ故、並の陰陽師より妖力は強く多い。
一瞬の陰りに少年が気づく。
「夕凪……?」
陰りが消えた顔でわざと小馬鹿にした笑みを作る。軽々しく原因なんか話す訳にはいかない。
「章来、呉々も浄化術の邪魔をするな。それと青もな」
「分かってる」
「言われなくても邪魔はしねぇよ」
章来が素直に言い、青はつんと横を向いた。
静かに少女が些か不機嫌な横顔を見つめ続ける。
(貴様に礼を申していなかった)
(礼ねぇ……)
どうでもいいように答えて目を動かす。
(これで借りはなしだぞ)
再び念を伝えて艶やかに微笑んでみせた。
瞬きを止めて青は艶めかしく美しい微笑みを見つめた。不覚にも目と心を奪われる。
「浄化だ。夕凪、早く浄化をしろ。早く!!」
思い切り章来は眉をしかめる。蝶彩が微笑した事が気に入らないようだ。
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