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両手を翳した白妙は二刀の刀を出現させる。細身の美しい対の刀だ。
一振りをして明確に蝶彩の首を狙う。
身を反らしてかわす。呪符に指を走らせると表面が妖力を帯びた。
精神を落ち着かせる。焦りが平静さを奪い、死を早めるからだ。
白妙は対の刀を巧みに使い熟す。所作は優美で無駄な動きがない。
斬りかかると見せかけ身を引く。引くと思わせて斬りかかる。
蝶彩の急所を見事に狙っていた。何とか攻撃を擦れ擦れで避け続ける。
「想となり変、して現となれ」
宙に浮いた呪符が光輝き渦を巻く。ぱっと弾けて漆黒の刀が出現した。
刀特有の白刃ではなく喩えるならば、濃い闇を思わせる黒刃だった。
刃と刃がぶつかり合い、金属音が響く。
一刀と二刀では明らかに一刀の方が部が悪い。
白妙が繰り出す攻撃を蝶彩は一直線に薙ぐ。
柄を両手で握って力ずくで二刀を受け止めた。手が痺れ落としそうになる。
白妙は後退り、鋭い踏み込みで脇腹を突く。
狩衣を斬り裂き、皮膚をも斬り裂いた。鮮血で狩衣が染まる。
痛みを気にせず蝶彩は後方へ数歩下がって、冷静に間合いをとる。
一瞬の隙をつき、白妙の刀を弾いた。高い金属音と共に弾かれた、刀は高々と舞い上がる。
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