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「はぁ、決着……?笑わせんな」
冷淡な声音には少なからず、馬鹿にした響きが含まれていた。
「そんな傷を負う汝が戦っても、敗北する事は目に見えている。どうせ、もう呪符は数枚しか残っていないだろ。無様に死にたいのか」
突然込み上げてきたおかしさに蝶彩は笑声を漏らす。見透かされていたからだ。
青は一瞬驚き、掴んでいる手を緩める。
その一瞬にできた隙を逃さず、少女は身を捻って宙を舞う。痛みを感じさせぬ動きで着地した。
「青、悪いな」
「……」
無言で何も言わない彼の透き通った、綺麗な瞳を蝶彩が見据えた。
「私は見目も力も確実に成長したが、ずっと時はあの日から止まっていた。終わらせなくてはならぬ。それが私の為であり、白妙の為でもある」
「好きにしろ」
言いたい事はたくさんあったはずだが、敢えて本心に反する言葉を述べた。瞳の奥底にはどうにか抑制する怒りがあり、雰囲気は哀愁が漂っていた。
「これだけは言っておく。絶対死ぬなよ。蝶彩」
「私が死ぬわけない。手出だしは無用だぞ」
「分かった」
最後に青を直視して蝶彩は白妙に目を向けた。
青は不安で心配していた。誰かが自分を思ってくれるのは、くすぐったくも温かい気持ちが広がり嬉しい。
彼には世話になった。もう煩わせたくはない。
間もなくかけられていた術は白妙に破られるだろう。
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