再び

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再び

どんなに走っても走っても周囲の光景は、闇に包まれた木々が続く道のみ。暗闇は不安を増幅させる要素だ。 蝶彩は木の根に足を引っかけて無様に転んだ。幸い足首は捻らず、よろけながらも立ち上がり歩みを進めた。 こうしている内にも刻一刻と火は広がり、村はどんどん燃えているのだ。 これ以上何かを失うのは嫌だ。怖い、恐ろしい……。 自分の手からどんどん光が零れ落ちていく。大切な人がそばから消えていってしまうのだ。 冷たい風が頬を冷やした。 「蝶彩」 幼い声が少女を呼び止めた。心臓に衝撃を受けて驚く。耳に残るこの声は忘れもしない。 「清輝……」 後方を顧みると薄い茶色の髪をした、狩衣姿の少年が立っていた。 「蝶彩」 にこやかに笑う清輝の顔が突如歪んだ。ぱっくりと傷口が開き血が迸る。見る見る内に着物が血で染まった。 「嫌、だ。嫌だ!」 蝶彩は頭を抱えてその場に膝を突く。 倒れた少年は二度と体を動かさなかった。 「痛い、痛い!」 ぴくりとも動かなかった彼が行き成り立ち上がる。たどたどしい足取りで近づいて来る。 「なぁ、どうしてあの時、助けてくれなかったんだ」 血が地面にぽたぽたと落ちる。赤い滴が跡を残す。
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