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「レオニール殿に嫌われてしまったらどうしましょうか…」
もう心底ブルーだった。
そんな時に部屋の戸を叩く音がして、アルケインは思わず「開いてますから入ってきて下さい。」と、言ってしまった。
近付く足音…
アルケインは慌てて脱衣場から浴室に隠れた。
だがしかし無情にも脱衣場に次いで浴室の扉は呆気なく開かれる。
「お待たせしましたアルケイン将…ぐ…………」
勢いよく開けた扉、その向こうの存在に、レオニールは驚きのあまり目を見開く。
握り締めていた石鹸が手から落ち、タイル地の床を跳ね滑った。
「もしやいつもその姿で入浴されているのでしょうか?」
「あの、その…
いえいつもは違います。」
気まずい空気が流れ、レオニールは気付く。
仮面がどこにも無いことに…
「これは、その、陛下の夢を壊したら大変な事になると…
いえ、あのレオニール殿すみません…」
そう言いしゅんと俯いたアルケインに、何とも言えない感情が込み上げる。
そういえば、ネクロス兵が、アルケイン将軍がずっと牢屋に閉じ込められていたと言っていた事を思い出す。
なんでも、笑えないネタで笑わせろと命じられ失敗し、投獄されたらしい。
その後、何度か牢屋から出られるチャンスがあったそうだが、ネフィリム王のイメージを壊したり、鼠と友となり、どちらか一方しか出て来れないという二択を迫られ、葛藤したその姿が気持ち悪いと見捨てられたりしたらしい。
今度イメージをぶち壊したら、牢屋ではすまないとでも思っているのだろうか?
レオニールには何だかとても不憫に思えた。
「アルケイン将軍…」
「なっ何でしょう?」
「ここには俺とあなたしか居ません。
他言するつもりはありません。
だから無理をしなくてもよいのでは?」
「本当に?」
今にも泣き出してしまいそうな声でそう言うものだから益々不憫になった。
「ええ…
そうだ!アルケイン将軍。
背中、お流ししましょうか?
実は俺もまだ入浴してなくて…」
「本当に!?
実は背中を流し合うのが夢でして、とても嬉しいです。」
不死で年齢不詳なのに、背中を流し合うのが夢だなんて…
もうレオニールにとってしたら色々な事が衝撃だった。
あの剣の達つ彼が…
あまりの恵まれなさに、レオニールの心のアルケイン将軍がどれだけ不憫かゲージがはちきれたのは言うまでもない。
嘗ての敵とはいえ優しくしてあげなくてはな…
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